家庭の獣医学|No.13 体を痒がる(3)

その3 アレルギー、アトピーによる皮膚病

前回までに細菌による皮膚病、寄生虫におる皮膚病についてお話してきました。今回は皮膚病の中でも治療に飼い主さんの協力が重要で、長期間に及ぶ治療の必要があるアレルギーとアトピーについてお話します。

はじめに、アレルギーとアトピーという言葉は、同じような意味に受け取られる方も多いですが、正確にはちょっと意味が違います。

  アレルギー:免疫学的原因による過敏症
  アトピー:アレルギー反応を発現しやすい素因

という定義が存在します。難しいように感じますが、簡単に説明すると、アレルギーは痒みや湿疹が起こる症状をさしており、アトピーはアレルギーになりやすい体質をさしています。それぞれについて、もう少し詳しくお話しします。

○アレルギー

体は、外から入ってきた異物に対して免疫(抗体)を作って体を守ろうとします。その反応が過剰に起きて異常がでる状態がアレルギーです。その異物のことを、抗原とかアレルゲンと言います。ちなみに、人で多くなっている花粉症もアレルギーの一種です。この場合は花粉がアレルゲンになり、体を守ろうとする反応で鼻水や涙、目のかゆみなどが起こります。犬のアレルギー性皮膚炎には、ノミの吸血で起きるノミアレルギー、環境なある花粉やイエダニに反応するアレルギー性皮膚炎、食べ物の中の成分に反応する食物性アレルギー性皮膚炎などがあります。

治療としては原因となるアレルゲンを取り除いてあげる事が重要です。その為に、ノミの駆虫薬を使ったり、除去食といわれるアレルゲンになりにくい食事を与えたりします。さらに、抗生物質や抗炎症薬を使うことも多いです。アレルゲンが再び入ってこないように注意していきましょう。

○アトピー

上記でお話ししたように、アトピーとはアレルギーになりやすい体質の事です。ということは、いろいろなアレルゲンに対してアレルギー反応を起こすことになります。たとえば、イエダニ、飼料ダニ、花粉、食物(肉類、卵、乳製品、大豆など)、ノミ、細菌、真菌など多くのアレルゲンに反応します。また、遺伝的になりやすい犬種があり、柴犬、シーズー、レトリバー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどは注意が必要です。

アトピーの症状にみられる特徴は、
・6か月齢から3歳の間に臨床症状が発現
・痒みに対してコルチコステロイドの治療に反応する
・前肢左右の指間に発赤病変がある
・耳介内側には発赤があるが、周囲にはない
・口周辺の病変(口唇炎、顎の炎症)

これらの特徴に当てはまるようなら、アトピーの可能性が高くなります。
  治療としては症状の重症度によって様々な治療法があり、それらを組み合わせて飼い主さんと愛犬愛猫に無理のない治療を行うことになります。抗炎症薬、抗生物質、抗真菌薬、食事療法、ノミ駆除薬、シャンプー、保湿剤、減感作療法、漢方薬などです。どれを選択しても長期にわたる治療が必要になることが多いです。