家庭の獣医学|No.8 ドッグフード、キャットフードについて

犬や猫を飼い始めてまず悩まれるのは、何をどれだけやったらいいのかということだと思います。犬や猫が健康に生活するためには、その動物の状態(成長期か、妊娠中か、老齢期か)に応じて、バランスのとれた必要な栄養素を体外から取り入れる必要があります。

犬や猫の食事でおそらく最も優れたものは、栄養学的にバランスのとれた安全で良質な材料を使って手作りしたものでしょう。しかし手作りとはいっても人間と犬や猫では必要とする栄養素の質や量が違いますので、私達人間の食事をそのまま犬や猫に与えてもよくないことがあります。つまり人間用とは別に犬や猫用に考えたものを作らねばなりません。飼い主が犬や猫に適した手作り食をその動物の生涯ずっと作り続けることは時間的にも費用的にもなかなか難しいでしょう。

100点満点の手作り食に比べて80点前後の点数しかとれませんが、良質で安全な信頼できるドッグフード、キャットフードなら成長期から老齢期までコンスタントに合格点の食事を犬や猫に与えることができます。しかし半面あまり品質が高くないフードやバランスの悪いフードも少なからず見受けられます。犬や猫はあなたから与えられたものしか食べられないのですから、これらの信頼できないフードを長くやり続けると病気になってしまう可能性があります。まずはあなたの犬や猫の状態に適した良質で安全な信頼できるドッグフード、キャットフードを見極めてあげることが大切です。

その他、意外と気づいていないことに、ドッグフード、キャットフードの変敗があります。これらのフードは保存性がよいと思われていますが、実際には開封して長期経つとビタミン類が抜けてしまったり、脂肪分が酸化変質したり、ひどい場合はカビが生えてしまうこともあり得ます。これらにより嘔吐や下痢、肝障害などを起こすことがありますので、一般的にはこれらは開封したらできるだけ密閉された容器に入れ、高温多湿の環境は避け、大量買いはやめてせいぜい1ヵ月半以内で食べきってしまうようにしてください。  獣医師は動物の治療だけではなくあなたの動物の状態に適したフードの相談にも乗ってくれますので、もしわからないことがありましたら、動物病院に相談してみてください。

人間が食べてもいいが犬や猫が口にしたら悪いもの

犬や猫はいろいろなものを口にします。 犬や猫が食べてしまうと危険なものは私達が想像する以上にたくさんあり、私達 人間が食べて駄目なものはもちろん犬や猫には与えないでいただきたいのですが、 中には人間が普段食べている食物でも犬や猫たちにとっては命に関わるものがあります。 ここでは私達の身近に存在し人間が食べても全く問題がないが犬や猫が食べてしまうと命に関わるほど危険なものの主な例とその症状を紹介致 します。もし、思い当たるものを与えていて症状があれば動物病院に相談してください。

ねぎ類(玉ねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニクなど)
犬や猫ではねぎ類に含まれている成分が赤血球を破壊してしまうため、それらを食べてしまうと溶血性貧血を起こしてしまいます。
これらは食べてからすぐには発症せずに、数日おいて発症します。少量だとほとんどが無症状で自然回復しますが、まれに微量でも重症になる場合もあり、ぐったりしたり赤いおしっこが出たりする場合は動物病院にご連絡ください。
この成分は水溶性のため、ねぎ類を除いた味噌汁やスープ類、すき焼きの残り汁でも発症することがあります。

カカオ類(チョコレート、ココアなど)
カカオ類に含まれるテオブロミンには興奮作用があり、人間では適度なリラックス効果をあらわすのですが、犬や猫ではこのテオブロミンに対する感受性が高く、これらの含まれたチョコレート、ココアなどを食べると数時間ほどで嘔吐や下痢、ふるえやけいれんなどがみられ、急性心不全などで死亡する例もあります。ひとかけらほどでは症状がなければそれほど心配ありませんが、小型犬で板チョコ1枚程度食べた場合は致死量になることがあります。もし、チョコレートを多量に食べてしまったら、製品名、いつ・どれくらいの量を食べたか?をすぐに連絡してから動物病院へ行ってください。

・ブドウ(干しブドウ、ブドウの皮含む)
アメリカで、ブドウを食べたことが原因と思われる中毒症状が1999年から犬で報告されています。原因ははっきりしていませんが、日本でも発生報告が出てきました。
症状としてはブドウを食べた後3日以内に吐き気、下痢がみられ、数日後には腎不全を呈し長期間の治療が必要になるものや死亡に至るものもあります。
小型犬などでは少量のブドウでも、またぶどうの皮のみでもこのようなことが起こる可能性があるので、与えないに越したことは無いと思われます。
ブドウを食べた後に下痢や嘔吐などの症状が見られた場合は早急に動物病院へかかり獣医師の診察を受けると同時に、ブドウを食べたことを伝える必要があります。
猫ではまだブドウによる中毒の報告はありませんが、避けたほうが無難でしょう。

・人間用の風邪薬、鎮痛剤
犬や猫が風邪をひいた、痛そうだからと、人間用の風邪薬や鎮痛剤を安易に飲ませてはいけません。風邪薬に含まれるアセトアミノフェンや鎮痛剤に含まれるイブプロフェンなどは腎臓の障害が報告されていますし、また胃潰瘍、最悪の場合は胃穿孔などを起こすこともあります。もし間違って投与した場合、早めに動物病院へかかっていただき、獣医師にどのようなタイプの薬をどれだけの量、どのくらい前に飲んだかを告げてください。

・キシリトール
ガムなどの甘味料に使われています。犬においては特に空腹時に少量でも摂取すると30分以内に血糖値が低下し、嘔吐、歩行困難、内出血、ケイレン、肝不全、そして死に至る危険性があるといわれています。もし間違って犬にガムを与え、このような症状が見られたら、なるべく早く動物病院へ連絡し、キシリトールの含まれた食べ物を摂取した旨を告げ速やかに獣医師の診察を受けてください。食事と一緒にキシリトールを与えた場合は何も症状が出ないことが多いので、症状が出ていない場合はまず食事を与えたり、砂糖の入ったおやつを与えたりして様子を見てもいいでしょう。ともあれキシリトールが含まれた食べ物は避けたほうが無難です。
猫ではこのような中毒症状は報告されていません。

・人間用のサプリメント
動物用ではなく人間用のサプリメントを安易に犬や猫に与えることは非常に危険です。
人間用のビタミン製剤、コエンザイムQ10製剤、ヒアルロン酸製剤などにはαリポ酸(チオクト酸)が含まれる場合が多く、人間には疲労回復や老化防止作用がありますが、特に猫ではこれが重大な急性肝障害を起こすことがわかってきました。このようなサプリメントでは、αリポ酸の含有量も違いますので一概には言えませんが、一錠食べただけでも危険な可能性があります。症状としては異常な興奮、よだれ、ふらつき、多量摂取では死亡例もありますので、もしこのような症状が現れたら、食べたサプリメントの瓶や袋などを持ってすぐに動物病院へかかってください。
また、これらのサプリメントは犬や猫が自ら好んで食べることもありますので保管場所には気を付けてください。
その他、少量は問題ないが毎日はやらないほうがいいものとしては、レバー、キャベツ類、ブロッコリー、ほうれん草、甘いもの、塩辛いもの、香辛料などがあります。また、マカデミアナッツによる起立不能の報告もあります。
猫の場合は尿路結石症が多いため、マグネシウムを多く含む煮干し、鰹節の過剰給与、ある種のミネラルウオーターには注意してください。

最後に
食事に限らず、心配なことや分らないことがあれば、まずかかりつけの獣医師に相談してみましょう。その子に応じた適切なアドバイスがもらえると思います。そのためにもいつでも相談ができるかかりつけの動物病院をぜひつくっておいてください。福岡市獣医師会のHP(https://fukuoka-shiju.jp/)には会員の動物病院が紹介されていますのでご利用ください。