家庭の獣医学|No.3 初めて猫を飼う方へ

家族の一員として子猫を家に迎える時、特に初めて猫を飼われる方は喜びや期待と同時に、食事は何をあげれば良いのか、予防は何をすれば良いのか、病気が心配・・・など、分らないことや心配なことが次々に出てくることと思います。 今回は初めて猫を飼われる方向けに、子猫を家にお迎えしてから最初の1年間に起こる体の変化や必要な予防について説明したいと思います。

生後1~2カ月 初回混合ワクチン(初年度は2~3回接種)
  フィラリア予防
生後3~6カ月 乳歯から永久歯へ生え替わる

生後6カ月頃 雌では初回発情
この頃から不妊・去勢手術が可能

生後7~9カ月 成長が落ち着く
1歳頃 食事を子猫用から成猫用に切り替え

猫を迎える準備

まず、猫を家に迎えるにあたって考えてほしい事があります。猫をどの場所で飼うかということです。昔は自由に外で飼ったほうが良いという考えもありましたが、外は危険がいっぱいです。交通事故、ケンカ、伝染病、ノミダニ、迷子など、外は怖いことがたくさんありますので、今では猫は室内のみで生活をさせたほうが健康で安全に暮らすことができると考えられています。  
場所が決まれば、次は猫の生活必需品です。寝床、食器、トイレ、爪とぎ、病院などに行くときのキャリーバッグくらいは、できるだけそろえておきましょう。

マイクロチップ・名札

部屋の中で生活するとしても、万が一外に出てしまった時のために、マイクロチップを装着したりや住所名前を書いた名札を付けておくことをお勧めします。迷子になったり、事故にあって保護された時もすぐに身元が確認できます。特にマイクロチップは猫の皮下に埋め込むため、脱落するおそれがありませんし、動物管理センターや動物病院に設置してある読み取り機で登録番号を確認することで飼主が確実にわかります。国や福岡市はマイクロチップの装着を推進しています。

混合ワクチン

1.ワクチンで予防できる伝染病
ワクチン接種で予防できるものには、ウイルス性鼻気管炎、カリシウイルス感染症、汎白血球減少症、クラミジア病、白血病ウイルス感染症、免疫不全ウイルス感染症などがあります。

2.ワクチンの種類  
これらの複数の感染症を同時に予防できる混合ワクチンは、対象となる感染症の数によっていくつかのタイプがあります。どのタイプのワクチンを接種するか、獣医師とよく相談して選んでください。

3.接種時期  
混合ワクチンは、生後2ヶ月目で最初の接種を行いますが、十分な効果をあげるためには3週間以上の間隔をあけて複数回の接種が必要です。翌年からは年1回の接種が望まれます。

4.接種後の注意  
ワクチン接種後は激しい運動やシャンプーは避け、なるべく安静にしておきましょう。また、まれに体質的にワクチンが合わないことによる副作用が起こることがあります。元気や食欲が無くなる、顔がむくむ、下痢・嘔吐、急にぐったりするなどの症状があれば、すぐに動物病院に連絡してください。

フィラリア予防

寄生虫の一種であるフィラリアは蚊を介して子虫が猫の体内に入ります。子虫は約半年で成虫になり、肺動脈や心臓に寄生します。これが血液の流れを妨げて心臓や肺に負担がかかり、命にかかわる様々な障害を引き起こします。このため子虫のうちに体内から駆除しておくことが重要です。
福岡では5月から11月までが蚊の活動期ですので、6月から12月にかけてがフィラリア予防の時期となります。
主に、犬にかかりやすい病気ですが、まれに猫もかかることがあります。蚊が多い地域の方や心配な方は、予防することをおすすめします。予防方法は体内に侵入した子虫を駆除する薬を動物病院で処方してもらって毎月1回投与しましょう。予防薬は飲ませるタイプや背中につけるタイプの薬があります。

乳歯から永久歯へ

生後3カ月頃になると乳歯が抜けて永久歯が生えてきます。乳歯が抜けかかってくると気持ち悪いので色々なものを噛むようになってきますので注意しましょう。
通常、乳歯は自然に抜け落ちて新しく永久歯が生えてきます。抜けた時に少量の出血がある場合もありますが心配はありません。
猫は人間に多い虫歯は滅多にありませんが、高齢になってくると歯石からの歯周病(歯肉炎、歯槽膿漏)が多発します。歯周病の予防は歯石の元となる歯垢の除去(歯磨き)が非常に有効です。初めは無理でも、徐々に慣れさせることから始めてみましょう。できなくても液体の歯磨きもありますので、利用してみてはいかがでしょうか。

猫の発情について

生後6カ月頃になると雌は最初の発情があります。6カ月齢の子猫でも雄猫と交尾すれば妊娠する可能性がありますので、発情がきたら注意してください。
発情期の行動としまして、落ち着きがなく転がったり、頭をすりつけたり、いつもと違う声で鳴いたり、後躯を持ち上げながらうずくまったりします。しかし、猫の行動は個体差が大きく、わかりずらいこともあります。
雄は雌猫の発情に刺激され発情します。よって、周りの雌猫次第でいつでも発情してしまい、室内飼いの猫でも、外の雌猫が発情していれば発情してしまいます。また、発情時期は外に興味を示し、室内飼いの猫は脱走する危険性があるので注意してください。

不妊手術について

不妊手術は6カ月頃から行うことができます。  
不妊手術のメリットとしまして、雌猫の場合、子宮蓄膿症や卵巣腫瘍、乳腺腫瘍など、性ホルモンの働きによって起こる病気の発症率が低くなることが挙げられます。また、雄を求めて大声で鳴いたり、外に出たがったりすることも少なくなり、精神的にも落ち着きがみられます。雄猫の場合、去勢することによって雄性ホルモンがなくなるため、生殖器に関わる病気の発症が少なくなることや、雌を奪い合うためのケンカ、雌を求めての放浪がなくなり、精神的にも落ち着くことなどがあります。また、強烈なニオイで多くの雄の飼い主を悩ます、室内でのスプレー行為(マーキング)など、人と一緒にくらしていくうえで困った行動を抑えることにも効果があります。  
不妊手術のデメリットとしまして、肥満になりやすいことです。しかし、これは異性を求めるために費やすエネルギーが不要となるため、消費カロリーが少なくなっているにもかかわらず、以前と同じ食事内容を与えるためにカロリーオーバーになることが最大の原因です。食事と運動の量を正しくコントロールすることで、肥満は避けられます。

食事について

1.年齢に応じた食事を
人間と同じように猫にも年齢や成長に応じた食事を与えなくてはなりません。成長期や妊娠・授乳期は多量のエネルギーや栄養素が必要とされます。通常よりも高カロリー、高栄養の食事を与えます。 キャットフードなら1歳頃までは子猫・成長期用、1歳から7歳頃までは成猫用、7歳以上は高齢猫用が適しています。フードの袋に適応する年齢が記載されていますので、購入時は確認してください。
2.食事の回数
1日の食事の回数は、成猫では1日1~2回、子猫では1日3~4回程度与えましょう。 下痢などお腹の具合の悪い時は1回に与える量は少な目にして、食事の回数を増やした方が良いでしょう。
3.与えてはいけないもの
人間には問題が無くても猫にとっては有害な食物があります。手作りの食事やおやつを与えるときは十分に注意しましょう。  
・ネギ類(タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラ等)
猫はネギ類に含まれるある種の成分によって溶血性貧血(赤血球が壊れることによる貧血)を起こします。野菜そのものが含まれていなくても、成分が溶け出しているスープなども要注意です。
・チョコレート
チョコレートにはテオブロミンやカフェインなどの有害な成分が含まれています。大量に摂取すると嘔吐・下痢やけいれんなどを引き起こし、死に至る場合もあります。
・ドッグフード  ドッグフードとキャットフードは並べて販売されていますがキャットフードの代わりにはなりません。猫と犬では必要な栄養素や摂取量が異なるためで、特に、必須アミノ酸であるタウリンがドッグフードでは不足してしまい、病気になることもあります。

最後に
一緒に暮らしていると心配なことや分らないことがいくつも出てきます。その時はまず、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。その子に応じた適切なアドバイスがもらえると思います。そのためにもいつでも相談ができるかかりつけの動物病院をぜひつくっておいてください。福岡市獣医師会のホームページ(https://fukuoka-shiju.jp/)には会員の動物病院が紹介されていますのでご利用ください。