福岡市獣医師会は「いのちを尊重」「すこやかな心の育成」「人と動物のきずな」をモットーに活動しています

 
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 今回は生殖器系の病気の中でも私たちが日頃よく遭遇する、前立腺と精巣の疾患について説明をしたいと思います。
 前立腺とは前立腺液を分泌する臓器で、この前立腺液が精子と合わさり精液となります。前立腺は膀胱の後方に位置し、大きさは犬種や年齢によって異なります。前立腺疾患は犬ではよく認められる疾患であり、猫ではほとんど認められません。特に犬の飼い主さんは注意が必要です。
 前立腺疾患にはおもに前立腺肥大、前立腺嚢胞、前立腺腫瘍、前立腺膿瘍などが挙げられます。以下、それらの病気について詳しく説明をします。
 
【前立腺肥大】
 前立腺はテストステロンという男性ホルモンの作用で活性化されます。歳をとるとそのテストステロンの分泌が過剰になり、ホルモンのバランスが崩れて前立腺の細胞が増殖して肥大します。これが前立腺肥大です。この肥大は単純に細胞の数が増えて大きくなるだけの過形成(良性)であり、腫瘍や膿瘍による肥大とは区別します。 しかしながら、便秘や排便時に痛みを訴えるなど、生活の質が低下する可能性があるので注意が必要です。
 予防法としては、精巣からのホルモン分泌過剰が原因なので、去勢をして精巣を摘出することが一般的です。
 
【前立腺嚢胞(のうほう)】 

  前立腺が肥大して膨張すると、前立腺の中に嚢胞と呼ばれる袋状の部屋ができてしまう場合があります。これを前立腺嚢胞といいます。その嚢胞内に前立腺液や血液などがたまってますます膨らんで巨大化していきます。嚢胞が大きくなると前立腺肥大同様に便秘を起こしたり、血尿や膿の混じった尿が出たりします。
 
【前立腺腫瘍】

  ヒトに比べると犬は前立腺腫瘍の発生率は少ないですが、前立腺に腫瘍ができた場合、高い確率で悪性腫瘍が考えられます。精巣のホルモンが関与していると言われていますが、正確な原因は不明です。
 
【前立腺炎・前立腺膿瘍】

 尿道などを経由して外部から細菌感染し、炎症を起こすのが前立腺炎です。炎症部分が化膿すると前立腺膿瘍になります。血尿や膿の混じった白っぽい尿が出たりします。細菌感染が原因で、ホルモンとは関係がないため、去勢済みの犬や若い犬でもなる可能性があります。

このように前立腺疾患にも様々なものがあります。排便に時間がかかったり、尿に血液が混じったりする場合には、前立腺の病気の可能性がありますので、動物病院で診察を受けるようにしてください。

続いて、精巣の疾患について説明します。

 
【停留精巣(陰睾)】

 精巣が出生後に陰嚢内に降りずに、お腹の中や皮膚の下に留まっている状態の精巣をさします。精巣は精子を形成し、男性ホルモンを産生します。精子形成機能は体温より低温の環境が必要なので、陰嚢内に精巣が存在しないと、この精子形成機能が果たされません。
 停留精巣が生じる原因としては、精巣下降に関与する性ホルモンの不足、鼠径管の形成不全、精巣を陰嚢内まで導く精巣導体の発達不良などの遺伝的素因等が考えられています。
 停留精巣からの精子形成は全くなく、雄の性ホルモンであるアンドロゲンの分泌量が低下するため性欲が減じる。両側性ではなく片側の精巣が陰嚢内に降りていれば、繁殖能力はある程度保たれている事が多いようです。
 このような停留精巣の犬では、精巣腫瘍の発生頻度が高いので比較的早期に去勢手術を施すことが望まれます。
 
【精巣腫瘍】

 停留精巣との間に有意な相関がありますが、腫瘍化する原因ははっきりとはしていません。
 特徴としては、6歳以上の犬に多く認められ、精巣全体が腫大するセルトリ細胞腫と性上皮腫、精巣実質の中央部に限局して起こる間質細胞腫などがあります。停留精巣の犬では、セルトリ細胞腫と精上皮腫の発生が多く、これらはリンパ節や周囲臓器に転移することもあります。
 また、セルトリ細胞腫では過剰なエストロゲンが腫瘍細胞から分泌されてしまうために皮膚や被毛の代謝異常を起こして脱毛、皮膚炎を起こします。また、乳頭が腫大して雌性型乳房を呈することがあります。
以上のようにオスの生殖器疾患は多く認められており、予防には去勢手術が有効です。ですから病気予防の観点から考えると早期に去勢手術をすることが望ましいと言えます。
 
 
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