福岡市獣医師会は「いのちを尊重」「すこやかな心の育成」「人と動物のきずな」をモットーに活動しています

 
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度
平成25年度
平成24年度
平成23年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
平成19年度
平成18年度
平成17年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度
平成25年度
平成24年度
平成23年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
平成19年度
平成18年度
平成17年度
 
トップページ > 家庭の獣医学
 前回、腫瘤(しこり)にはおおまかに何種類かに分類できるとお話しました。今回はどうやってその分類を行うか(診断)についてお話していきましょう。
“しこり”を診断していくうえで避けて通れないのが“生検(バイオプシーともいいます)”です。簡単に説明すると「病変の一部を切り取って(採材)顕微鏡で検査すること」なのですが目的や“しこり”の性質や場所によって様々な採材の仕方があります。
以下は生体組織検査(略して生検)の詳しい説明です。
 
 生検(せいけん)とは、病変の組織(細胞)を採取して、それを顕微鏡で調べる検査で、「バイオプシー」とも呼ばれます。患部の組織の一部を,麻酔をしてからメスや針などで切り取って,顕微鏡などで調べる検査です。この検査では、病気を正確に診断できる確率が高くなります。 例えば,がんの診断の場合,まず,画像検査や内視鏡検査を行って,病気がどこにあり,どんな様子かを推定します。その結果,がんである疑いが強く出れば, 患部の一部を切り取る検査をし,その場所や状態を推定します。この検査によって,診断を下し,治療に進みます。

 何故生検が大事かというと、一言でいえば「より良い治療を行うため」でしょう。例えばがんと闘う時に相手の正体も強さもわからず、ただ、やみくもに戦えば、強すぎる相手に無駄に勝負を挑んでいたり、弱すぎる相手に過剰な治療を施してしまうこともあるでしょう。事前に対戦相手(=がん)の情報を得ておけば様々な戦略を練ることができます。逆に言い換えると、「治療指針を計画するうえでの情報の一つが生検によって得られる。」ともいえますね。実際にはこのほかにがんの進行度や動物の全身状態などを考慮して総合的に治療計画を考えます。
 

では具体的にどのような場合に生検をするのでしょうか?生検(バイオプシー)の適応を見ていきましょう。

 
・生検の結果により治療方法が変わる場合
しこりが何なのか?また、もし腫瘍であればどんな腫瘍で良性なのか悪性なのか?腫瘍の挙動(その腫瘍がどういった特徴をもつのか)がわかります。

例:口腔内の線維肉腫〜局所浸潤性は強いが遠隔転移率は低い:つまりその場所でとても大きくなりやすいけれど肺などへ転移する確率は低く、しこりのある部分を完全に摘出することができれば根治の可能性も考えられるといったケースで治療方法(外科手術、化学療法、放射線療法、緩和的治療法)の決定、 外科手術が必要な場合はマージン(どれだけ切除するのか)の見積もり、化学療法では薬剤の選択等に役立ちます。
 
・ご家族の治療に対する意思決定が診断により変わる場合
例えば、大きなしこりがお腹にあり、良性であれば摘出するが、悪性で転移率が高い腫瘍なら外科的治療は行わず化学療法を選択する等、ご家族が治療の意思決定の判断材料とする場合

また、生検は大きく細胞診と組織診に分かれます。

 
表1:細胞診と組織診の長所と短所

 

細胞診

組織診

標本作製時間

短い(<30分)

数日〜十数日

麻酔の必要性

無し〜低い

高い

確定診断に至る割合

低い

高い

炎症性疾患の診断

容易

侵襲性

低い

高い

 細胞診とは病変部から主に針をさすことで細胞を採取し、顕微鏡にてその形態を観察、診断する検査です。針生検ともいいます。細胞診の特徴は、簡便、迅速、安全ですが、どうしても細胞だけの検査であること、針生検という文字通り、針の穴ほどの材料しかないこと、正常組織との関係性に関する情報は乏しいためある程度の診断までしかできないことが欠点です。
 
 一方、組織診では、材料採取に麻酔が必要なことが多く、組織片としてある程度の大きさを切除するので出血などのリスクは針生検(細胞診)よりも高くなります。さらにほとんどの場合外部検査機関(病理医)に診断を依頼することとなるので診断に要する日数や費用もかかります。しかし、組織では細胞の構造や腫瘍増殖と周囲組織との関係、腫瘍細胞の脈管(血管やリンパ管)への浸潤など、予後につながる重要な情報が得られます。(細胞診ではこれらの情報はえることができない)また、現在の腫瘍の分類は組織学的な特徴に基づいているため、最終的な確定診断は一般的に組織診により下されます。

簡単に言えば、検査をする材料が多ければ多いほど、得られる情報の正確さと質が増しますが、それと同時に時間とコストも増大し処置(麻酔など)も複雑になっていきます。

日常の診療では腫瘤をみつけたら、場所にもよりますが可能であればまず細胞診を行い、大まかな診断(腫瘍性疾患かそれ以外か)を下し、その後に必要性があれば麻酔をかけて組織診を行い診断を詰めていく!といった手順になることが多いです。

また、おなかの中にある脾臓という組織にとても大きな腫瘤があるという場合、もし破裂すれば命の危険があるため、それが腫瘍であっても腫瘍でなくても何であれ、「摘出すること」が第一と判断することがあります。このような症例では結果が出るまでに1週間かかる組織診をショートカットしていきなり外科手術を提示することもあります。このように、腫瘤の正体にかかわらず治療方法が変わらない場合には術前の検査を省くこともあります。

 
 
会員専用ページ入口