福岡市獣医師会は「いのちを尊重」「すこやかな心の育成」「人と動物のきずな」をモットーに活動しています

 
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 ある日、ふとあなたの大事な家族であるわんちゃんや猫ちゃんの体を撫でていたら、小さな「しこり」が体にある!確かに以前は無かった気がする・・・。そしてそれは何日たってもなくならず、1週間もすれば少しずつ大きくなっている気もする。そろそろ、動物病院に行って診てもらおうかな。
「しこり」ができた時、だいたいこのような主訴で来院される方が多い気がします。また、飼い主の方々から一番多く頂く質問が「このしこりはがんでしょうか?」といったものです。そこでまず「しこり」(=腫瘤)の中にどのような病変の存在が考えられるのかを見ていきましょう。
 
腫瘤(しこり)の分類

例外はありますがおおまかに腫瘤(しこり)は以上のように分類されます。形、色は多種多様でおできの様なものからイボの様に見えるもの、硬いものもあれば軟らかいものもあります。それではひとつずつ見ていきましょう。

 
炎症性病変:細菌や真菌などの微生物が宿主(わんちゃん、ねこちゃん)の体内でに侵入、定着、増殖することです。例としては怪我をしたあとに傷口が腫れあがって腫瘤(しこり)のように見える状態です。通常であれば眼でみて判断できます。(赤く腫れあがっていることが多いです)経験的に「ノギの実」やちいさな異物などが傷口から体内に入った場合鑑別が難しくなります。また、これらの感染が慢性化すると体の中の“お掃除屋さん”であるマクロファージなどが主体をなす肉芽腫と呼ばれる病変になることもあります。
 
過形成:人の手のひらにできるマメや踵が固くなるのと同じ現象です。よく大型犬の肘などは慢性的にこの状態になっていることが多いです。専門的には“細胞の増加により、臓器、組織が大きさを増すことであり、機能的要求や作業負荷、ホルモン作用を介するもの、再生時における過剰増生など”とあります。難しいですね。 一般的にはずっとその部位に刺激を受けることで皮膚などが固く、厚くなった状態と認識して頂いて大丈夫でしょう。なので過形成の場合急に腫れたように見えることがあっても以前からそこの部位には何らかの変化(厚かったり、硬かったり、色の変化)が認められていた可能性が高いと考えられます。
 
腫瘍:一般的に「本来自己の体内に存在する細胞が無目的かつ過剰に増殖する状態」と定義されます。つまり、体の中にある細胞が突然何らかの遺伝子異常によってどんどん増えてしまいそれを抑制することができない状態といえるでしょう。原則として腫瘍は単一の細胞に由来します。(単クローン性)逆にしこりが単一の細胞から構築されていることを証明できればそのしこりは腫瘍だといえます。その診断方法に関しては次回述べようと思います。体の中に癌細胞ができても、癌細胞が少ないうちは免疫で癌細胞を死滅させる力が動物には備わっています。しかし一定以上に癌が増殖してしまうと、免疫では死滅させることができなくなり、癌細胞が結合し腫瘍となります。また、腫瘍はその形態、および動態によって良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。
 
表1:一般的な良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

 

良性腫瘍

悪性腫瘍

発育形態

膨張性

浸潤性

周囲との境界

明瞭

不明瞭

発育速度

遅い

速い

増殖性

弱い

強い

再発性

弱い

強い

転移性

なし

あり

 良性腫瘍と悪性腫瘍の発育形態は大きく違い、前者が周囲の組織を破壊することなく成長する膨張性発育を示すのに対し後者では周囲組織を破壊しながら明瞭な境界を作らず増殖していく浸潤性発育を示す。さらに悪性腫瘍ではこれらの浸潤が必ずしも連続した細胞集塊としてだけでなく時に集団から離れた部位にも認められることがあります。(娘結節)
 

  腫瘍の増殖は初期のころは急速に増え、ある時や大きさを境にゆっくりとした変化に変わります。下のグラフはその増殖の割合をグラフに示したものです。
  ここでグラフ内に臨床検出限界という言葉がでてきました。これは「臨床的に(眼で見たり触ったりして)発見が可能な大きさ」という意味です。ほとんどの腫瘍でこの大きさは直径約1cm、(重さは0.5〜1.0g、細胞数が1億〜10億)とされています。言い換えますと角砂糖ていどの大きさ(1g)のがんには腫瘍細胞が1億個以上存在していることになります。そして腫瘍の増殖速度はこの臨床検出限界以下つまり、眼で見えない時の方が明らかに速いのです。
  例えばこの“がん”に放射線治療や抗がん剤を与えてがん細胞を1/10にします。0.1gの大きさでは人の目ではもはや見ることはできませんが細胞数ではまだ10,000,000個(1千万)残っています。そして、数回の細胞分裂でまた元の大きさにそして増殖と共に悪性度も増してしまうことも悪性腫瘍の特徴といえます。
 

悪性腫瘍はその細胞の起源によって大きく2つに分けられます。独立して機能できる細胞の腫瘍を独立細胞腫瘍、それ以外のものを固形がんと呼びます。さらにこの固形がんは発生した細胞によって癌腫と肉腫にわけられます。これに対して良性腫瘍の場合〜腫と起源の細胞、組織の名称の後に“腫”をつけて示されます。
 
まとめ
・腫瘤=しこりは一見同じように見えても炎症や過形成、腫瘍など様々な原因で疾患に分類される。
・腫瘍には悪性と良性があり、発育や特徴がそれぞれにある。
・肉眼で確認できる大きさ(発見初期)でも細胞学的にはがん細胞は成熟している。
 
 
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